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2009/03/04 武満徹、ジョン・ケージ「武満徹対談選」:音楽の自然、あるいはキノコのような存在、あるいは自然の音楽



ケージ こちらに来たときには、ああ、しまった、桜の花をのがしてしまった、と思ったのだけれど、
菖蒲にはちょうどいい時季だったんですね。誰でも、人間はいつだって、なにかちょうどいい時季にいるものだ。
それは音楽の自然であり、またそれは自然の音楽でもある。
私がキノコを好きなのも、ひとつにはそれがあるからなんです。キノコの時季というのはきわめて短い。
地上に姿を見せるやいなや、もう腐敗がはじまる。だから、もし君がキノコをひとつ見つけたとしたら、
それはちょうどいい頃合いに巡りあったということになるんだ。

武満 その話は、音楽に向うあなたの態度に繋がるように思うけれど。

ケージ そう、私の感じ方は変わらない。

武満 人間は、この地球上に生えたキノコのような存在でしょうか?

ケージ 長い年月もほんの一瞬に等しくなるような遠くから眺めれば、そんなものだろう。


どうですこのやりとり。
さすがに武満徹とケージ。宇宙人と絶対零度。たまりません。

武満の問いかけはかなりエキセントリックに過ぎるような気もするけれど、ここでケージが言って
いることは極めて真っ直ぐな感性を現しているだろう。
「人間はいつだって、なにかちょうどいい時季にいるものだ」
ピアノのキーに振れもせず曲を奏でる。そんな人間の音楽だ。うつくしい。

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