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2005/01/19 ポール・オースター「空腹の技法」:レズニコフの海


レズニコフに対する評論の中で、以下のような引用文が現れる。

生活費を稼ぐ仕事を一日中やって
僕は疲れていた。自分の仕事はまた一日失われた、
と思ったが、ゆっくりはじめると、
ゆっくり力が戻ってきた。
まさしく潮は一日二度満ちてくる。

レズニコフは六十過ぎになるまで評価されず、貧しい中で自作を発表し続けてきた。
オースターもいわゆる「ニューヨーク三部作」で文学的評価が定まるまでは非常に貧しく、この
レズニコフの文章には思うところがあったのだろう。

そして俺にも、レズニコフやオースターが感じたのとはきっと全く異なるレベルではあろうけれど、
響く音がある。



日々忙しく、心を擦り減らすような生活の中、
自分の中で何かが腐っていくという焦燥感あるいは、
こんなものだ、という諦めに似た気持ちは確かにある。
もっと悪いことには、これを当然のあるべき自分と
思ってしまうような瞬間がある。

でも、そうでしか有り得ないんだろうか?

潮が一日二度満ちるためには必要な自然と必要な科学がある。
ゆっくり始める、というのは重要なことだ。ゆっくり。
疲労感にやられそうになった時にこそ思い出したい言葉だ。
「潮は一日二度満ちてくる」
そのために必要な引力は、月は、ここにある。


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